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専門職向け 退院支援の実務

がん患者・終末期の退院支援
本人の意思を中心に在宅・緩和ケアへつなぐ

この記事でわかること
  • がん患者の退院支援の特徴と時間的切迫感
  • 告知後・治療終了後の本人・家族の心理と関わり方
  • 在宅緩和ケアへの移行に必要な体制整備
  • 緩和ケア病棟(ホスピス)への転院調整の実際
  • 疼痛管理・医療用麻薬の在宅移行
  • 家族への支援とグリーフケア

がん患者の退院支援が難しい理由

がん患者の退院支援には、他の疾患とは異なる難しさがあります。 病状の進行スピードが読みにくく、退院後の生活が急変することがあることが最大の特徴です。 「来月退院できそう」と思っていた患者が、1週間で状態が悪化することもあります。

また、「治療をやめる」「緩和ケアに移行する」という決断は、 患者・家族にとって非常に重い選択です。 その意思決定のプロセスに丁寧に関わることが、退院支援職の大きな役割のひとつです。

退院支援を始めるタイミング

がん患者の退院支援は、できるだけ早期から始めることが重要です。 積極的治療が行われている段階から「退院後の生活」を視野に入れ、 本人・家族の意向を確認し始めましょう。

📋 介入のタイミングチェックポイント

  • 入院時スクリーニングでがんと判明・または告知後
  • 化学療法・放射線療法の副作用でADLが低下したとき
  • 主治医から「治療の限界」「緩和ケアへの移行」の話が出始めたとき
  • 本人・家族から「このまま病院にいたくない」「家に帰りたい」の発言があったとき
  • Performance Status(PS)が低下し、退院後の生活に支援が必要と判断したとき

告知後・治療終了後の本人・家族の心理

がんの告知後、患者・家族は「怒り・否認・交渉・抑うつ・受容」といった 悲嘆のプロセス(キューブラー・ロスのモデル)を経ることが多いとされています。 ただし、このプロセスは一直線ではなく、行ったり来たりします。

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「まだ諦めたくない」という気持ちを否定しない
「治療をやめる=諦める」ではなく、 「痛みや苦しさを取り除きながら、残りの時間を自分らしく過ごす」という 緩和ケアの本来の意味を丁寧に伝えましょう。 緩和ケアは「最後の手段」ではなく、早期から並行して行うものです。
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「家族に迷惑をかけたくない」という本人の遠慮
多くの患者が家族への気遣いから、本当の希望を言えないでいます。 「家族のことは心配しなくていいです。あなた自身はどうしたいですか?」 と、本人だけに聞く機会を作ることが大切です。
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家族の「もっと治療を続けてほしい」という気持ち
患者本人が緩和ケアを希望していても、家族が受け入れられないことがあります。 家族の気持ちを否定せず丁寧に聞きながら、 「本人の意思」と「家族の願い」の両方を大切にした対話を続けましょう。 主治医・緩和ケアチームと連携した家族面談を設けることも有効です。

在宅緩和ケアへの移行に必要な体制

「自宅で最期まで過ごしたい」という希望を叶えるために、 退院前に以下の体制を整えます。

✅ 在宅緩和ケア移行チェックリスト

  • 在宅療養支援診療所(往診医)の確保
    24時間対応・看取り対応が可能な医師を確保しているか。 主治医から紹介状を出してもらい、退院前に顔合わせをしておくと安心。
  • 訪問看護ステーションの導入
    疼痛管理・医療用麻薬の管理・急変時対応の中心。 24時間対応可能なステーションを選ぶ。
  • 疼痛管理・医療用麻薬の在宅処方
    内服・貼付剤・持続皮下注射(シリンジポンプ)など、 在宅で使える疼痛管理の方法と緊急時の頓服指示を主治医と確認。
  • ケアマネジャー・介護サービスの手配
    要介護認定がある場合は訪問介護・福祉用具(介護ベッド・エアマット等)を手配。 介護申請が間に合わない場合は暫定プランで対応。
  • 急変時・看取りのルールを家族と共有
    「救急車を呼ばない」「誰に最初に連絡するか」を書面にして渡す。 → 在宅看取り支援の実践

緩和ケア病棟(ホスピス)への転院調整

在宅を希望しない・在宅が困難な場合は、緩和ケア病棟(PCU)への転院を調整します。 緩和ケア病棟は全国に増えてきていますが、待機期間が長い施設も多いため、 早めに情報収集・申込みを始めることが重要です。

📋 緩和ケア病棟への転院調整のポイント
  • 転院先の緩和ケア病棟に主治医からの紹介状(診療情報提供書)が必要
  • 多くの施設で本人・家族との面談(受け入れ判定)がある
  • 待機中に状態が悪化した場合の対応(一時在宅・一般病棟での待機)を検討
  • 複数施設に同時申込みしておくことも現実的な選択
  • 費用(差額ベッド代等)について家族に事前に説明しておく

疼痛管理・医療用麻薬の在宅移行

「麻薬を使うと廃人になる」「中毒になる」——こうした誤解が、 患者・家族の疼痛管理への抵抗感につながることがあります。 退院支援職として、正確な情報を伝えることが重要です。

よくある誤解と正しい理解
  • ❌「医療用麻薬を使うと寿命が縮まる」→ ✅ 適切な疼痛管理はむしろQOLを改善し、生存期間にも良い影響があるとされる
  • ❌「麻薬を使ったら最後」→ ✅ 症状が改善すれば減量・中止もできる
  • ❌「麻薬中毒になる」→ ✅ がんの疼痛治療目的での使用では依存は起きにくい

在宅での医療用麻薬は、訪問看護師・往診医の管理のもとで安全に使用できます。 緊急時の「レスキュー投与(頓服)」の方法も家族に伝えておきましょう。

家族への支援とグリーフケア

がん患者の退院支援では、家族もまた支援の対象です。 「介護している家族が先に倒れる」「看取り後に激しい後悔が残る」ことを防ぐために、 退院支援の段階から家族への関わりを意識しましょう。

  • 「介護で困っていること」を定期的に確認する(訪問看護師・ケアマネとも連携)
  • レスパイト(家族が休める機会)としてショートステイや一時入院の選択肢を伝える
  • 「看取り後に後悔しないために今できること」を患者在存中から一緒に考える
  • 看取り後のグリーフケアについては訪問看護師・主治医と引き継ぎを行う
ご注意
医療用麻薬の使用・疼痛管理は必ず主治医の指示に従ってください。 個別の医療判断はそれぞれの担当医・緩和ケアチームにご確認ください。