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専門職向け 退院支援の実務

転院調整の実際
施設・病院への問い合わせから受け入れまで

この記事でわかること
  • 転院先・入所先の種類と選定の考え方
  • 問い合わせ・打診の実際の流れ
  • 診療情報提供書・看護サマリーの準備ポイント
  • 受け入れを断られたときの対応
  • 家族への説明・同意の取り方
  • 調整が難航するケースの対処法

転院先・入所先の種類と選定の考え方

退院先の選定は、患者の医療依存度・ADL・認知機能・経済状況・家族の状況を 総合的に判断して行います。まず「どのような医療・ケアが必要か」を整理し、 それに対応できる施設種別を絞り込むのが効率的です。

転院先・入所先 こんな方に 医療依存度 平均在院・入所期間
回復期リハビリ病院 脳卒中・大腿骨骨折など発症後にリハビリが必要な方 最長180日(疾患により異なる)
地域包括ケア病棟 急性期後の在宅復帰・生活機能回復が目標の方 中〜低 最長60日
療養型病院(医療療養) 医療処置が継続的に必要で施設入所が困難な方 長期(月単位)
老人保健施設(老健) 在宅復帰を目指してリハビリ・医療管理が必要な方 3〜6か月(在宅復帰が目標)
特別養護老人ホーム(特養) 常時介護が必要で在宅生活が困難な方(要介護3以上) 低〜中 長期(終身利用が多い)
介護医療院 医療処置+長期介護が必要な方(療養病床からの移行先) 高〜中 長期
グループホーム(GH) 認知症があり比較的ADLが保たれている方 長期
緩和ケア病棟(ホスピス) がん末期・治癒困難な疾患で症状緩和を重視する方 高(緩和的) 平均3〜6週間
⚠️ 特養の入所申込みは「待機」になることが多い
特養は多くの地域で待機者が多く、申込みから入所まで数か月〜1年以上かかることがあります。 「特養申込み中」のまま退院させるには、在宅サービスの並行調整が必要です。 入院中に申込書を提出し、優先度が高い場合は「入院中」「緊急性あり」を 申込み書の特記欄に記載しましょう。

転院・入所調整の流れ

候補先のリストアップ
地域の施設・病院のリストを整備しておきます(地域連携室・MSW間で共有)。 患者の医療処置(気管切開・吸引・経管栄養・胃ろう・IVH・透析等)を 受け入れられる施設に絞り込みます。 距離・費用・雰囲気の希望がある場合は家族の意向も確認します。
主治医に転院打診の了承を得る
転院調整を始める前に「主治医の同意」が必要です。 「●●方向で調整してよいでしょうか」と確認し、転院適切性の判断・ 診療情報提供書(紹介状)の作成依頼も合わせて行います。 主治医への相談なく家族と話を進めることは避けましょう。
施設・病院に電話で初回問い合わせ
「地域連携室(相談窓口)」に電話します。 伝えるべき情報は次のとおりです。
  • 患者の年齢・性別・主病名・現在の入院先
  • ADLの概要(歩行・食事・排泄・認知)
  • 継続が必要な医療処置の有無
  • 要介護度(または申請中かどうか)
  • 希望退院時期の目安
空き状況・受け入れ可否の初回確認を行います。
書類の送付・情報提供
受け入れ検討に進む場合、以下の書類を送付します。
  • 診療情報提供書(紹介状):主治医作成
  • 看護サマリー(看護情報提供書):担当看護師作成
  • ADL評価表・リハビリサマリー:PT/OT/ST作成
  • 介護保険証・認定通知書のコピー
  • 薬剤情報・アレルギー情報
施設によってはFAXかメール、独自の受け入れ確認シートを使う場合もあります。
施設・病院の審査(カンファレンス)
書類を受けた施設側が「受け入れ可否」を判定します。 施設によっては「見学・面談」「医師による診察」を求める場合があります。 判定には数日〜1週間程度かかることが多いため、 複数施設に並行して打診することで時間を節約します。
受け入れ決定・退院日の調整
受け入れが決まったら、転院・入所日を双方で調整します。 患者・家族に結果を報告し、「入所契約・説明」の日程を施設と調整します。 転院当日の搬送手段(自家用車・介護タクシー・救急車)も確認します。

診療情報提供書・看護サマリーの準備ポイント

📋 看護サマリーに記載すべき内容

  • ADL(食事・排泄・移動・入浴):自立・一部介助・全介助の別を具体的に
  • 認知機能:会話の成立・指示理解・問題行動の有無
  • 医療処置:吸引の頻度・チューブの種類・次回交換時期
  • 内服薬:剤型(錠剤・粉砕・液体)・嚥下困難の有無
  • 感染症:MRSA・VRE・CRE等の保菌状況(隠さない)
  • 褥瘡:部位・ステージ・使用している処置方法
  • 行動・精神面:不穏・転倒リスク・暴言暴力の有無
  • 家族の状況:キーパーソン・面会頻度・介護への参加度
  • 本人の希望・ACP内容:急変時対応(蘇生の希望等)
⚠️ 感染症情報は必ず正直に伝える
MRSAなどの保菌情報を隠して転院させることは、 受け入れ施設の感染管理を妨げ、他の入所者への感染リスクにもなります。 「伝えると受け入れを断られるかもしれない」という理由での隠蔽は 医療倫理上も問題があり、施設との信頼関係を失います。 正直に伝えたうえで、対応可能な施設を一緒に探しましょう。

受け入れを断られたときの対応

断られた理由対応策
空きがない 他施設に並行打診。「空きが出たら連絡を」と待機登録をお願いする。
医療処置の対応不可(吸引・胃ろう等) 対応可能な施設に絞り直す。介護医療院・療養型病院を検討。
MRSA等の感染症保菌 感染症対応可能な施設を探す。療養型・介護医療院は対応可のことが多い。
認知症の問題行動(暴言・暴力・徘徊) 精神科認知症病棟・認知症専門施設・グループホームを検討。向精神薬調整の余地を主治医と相談。
費用が払えない 低所得者向けの特養・低額施設・生活保護対応施設を探す。生活保護申請の検討。
要介護度未認定・申請中 介護度が出るまで在院延長か、区分変更・暫定認定を活用する。

家族への説明・同意の取り方

転院・入所先が決まったら、家族に丁寧に説明します。 「なぜそこなのか」「どんなケアが受けられるのか」「費用はどのくらいか」を 具体的に伝えましょう。

💬 家族説明の主なポイント
  • 施設・病院の概要(場所・雰囲気・面会ルール)
  • 医療処置・リハビリの継続状況
  • 費用の目安(月額・初期費用・加算の内容)
  • 「なぜここを選んだのか」理由の説明(本人のニーズとのマッチング)
  • 見学の機会の案内(可能なら事前見学を勧める)
  • 転院日・搬送手段・手続きの流れ

調整が難航するケースへの対処

受け入れ先が見つからない「超高度医療依存」ケース
人工呼吸器・気管切開・24時間吸引が必要な患者は、 多くの施設が受け入れ困難です。 医療型障害者施設・療養型病院・在宅(訪問看護+往診の体制構築)を 多方向から検討します。 地域の医師会・行政の医療調整窓口に相談することも有効です。
家族が施設入所を拒否するケース
「在宅で看る」と言っている家族が実際には介護困難な場合、 まず家族の気持ちを受け止めたうえで「具体的に在宅でどう介護するか」を一緒に考えます。 在宅サービスをフル活用した試験退院→施設を再検討、 という段階的なアプローチが有効なことがあります。
本人が施設入所を拒否するケース
「絶対に施設には行かない」という意思が明確な場合、 その意向を記録したうえで、在宅での支援を最大限整えます。 認知症等で判断能力に疑問がある場合は、 成年後見制度・家族との合意形成・主治医・チームで方針を協議します。 無理に施設に押し込むことは避けましょう。
身寄りなし・経済困難のケース
身元保証人を求める施設は多いですが、 「身元保証人がいないと施設入所できない」というのは法律上の義務ではありません (厚労省通知 令和6年)。 生活保護を活用した施設利用・身元保証支援サービス・ 成年後見制度・地域包括支援センターへの相談も組み合わせます。
⚠️ 「退院日」を先に決めないようにする
病棟の都合で退院日を先に設定し、転院先が決まっていないまま退院させることは、 患者にとって非常に危険です。 「退院日ありき」ではなく「受け入れ先が整ってから退院日を設定する」 という順序を院内で共有しましょう。 どうしても在院が長引く場合は、地域連携室や行政へ相談します。