退院支援計画書は、入退院支援加算を算定するうえで欠かせない書類です。令和8年度診療報酬改定では記載事項・療養支援内容の充実がさらに求められています。本記事では、作成タイミング・必須記載事項・患者説明のポイント・よくある記載ミスを現場目線で解説します。
📎 根拠・参照
入退院支援加算(A246)算定要件 / 令和8年度診療報酬改定 告示・通知※ 算定要件・記載事項は改定のたびに変更されます。必ず最新の通知をご確認ください。
≡ 目次
退院支援計画書とは何か
退院支援計画書は、退院困難な要因を持つ患者に対して、入院中から退院後の生活を見据えた支援内容を明文化した文書です。入退院支援加算(A246)の算定要件として作成が義務付けられており、単なる書類ではなく「支援の設計図」として機能します。
💡 計画書が果たす役割:
患者・家族との目標共有 / 院内多職種への共有 / 退院後の在宅チームへの引き継ぎ資料、という3つの役割を同時に担います。「算定のための書類」という意識から「支援ツール」として活用する視点に変えると、記載の質が上がります。
作成タイミング:入院後7日以内が原則
-
1
入院後3〜7日以内:スクリーニング実施 退院困難な要因(疾患・生活背景・家族状況等)を病棟看護師または社会福祉士がスクリーニング。該当者を抽出する。
-
2
入院後7日以内:計画書の作成着手 算定要件上は「7日以内に作成着手」が求められる。この段階での計画書は暫定版でも可。患者・家族の状況を確認しながら随時更新する。
-
3
作成後すみやかに:患者・家族への説明・同意 作成した計画書を患者本人・家族に説明し、署名(または口頭同意の記録)を得る。コピーを患者に交付する。
-
4
退院まで:随時更新 病状変化・退院先変更・サービス変更に合わせて計画書を更新し、その都度説明・同意を得る。更新履歴を残しておくと査定対策にもなる。
⚠️ 「7日以内」は着手であり完成ではない
入院後7日以内に「作成に着手した」記録が必要です。全項目が揃っていなくても、患者情報と退院困難要因が記載されていれば「着手」と認められます。ただし「着手したまま放置」は査定対象になり得るため、随時更新の記録が重要です。
入院後7日以内に「作成に着手した」記録が必要です。全項目が揃っていなくても、患者情報と退院困難要因が記載されていれば「着手」と認められます。ただし「着手したまま放置」は査定対象になり得るため、随時更新の記録が重要です。
必須記載事項(令和8年度改定対応)
令和8年度改定では、以下の事項の記載が求められています。前改定(令和6年度)から継続・強化されているポイントに注目してください。
📋 退院支援計画書の必須記載事項
- 患者氏名・入院日・計画作成日
- 退院困難な要因(具体的に列挙する)
- 退院に向けた目標(患者・家族の意向を反映)
-
入院中に行う療養支援の内容 ※令和6年度改定で追加。リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等を含む内容の記載が必要
- 予想される退院先(自宅・施設・転院先など)
- 退院後に利用が見込まれるサービス(介護・医療・障害福祉など)
- 患者・家族への説明日・署名
- 担当者名・職種
💡 「療養支援内容」の記載が令和6年度から強化されています
リハビリテーション(PT/OT/ST)・栄養管理(管理栄養士)・口腔管理(歯科・歯科衛生士)それぞれについて、「入院中に何を行うか」を具体的に記載します。「リハビリあり」だけでなく「週3回の歩行訓練、退院時には歩行器使用自立を目標」のように具体的に書くことで、多職種への共有資料にもなります。
リハビリテーション(PT/OT/ST)・栄養管理(管理栄養士)・口腔管理(歯科・歯科衛生士)それぞれについて、「入院中に何を行うか」を具体的に記載します。「リハビリあり」だけでなく「週3回の歩行訓練、退院時には歩行器使用自立を目標」のように具体的に書くことで、多職種への共有資料にもなります。
各項目の書き方ポイント
① 退院困難な要因
「疾患が重症」ではなく、退院を困難にしている具体的な要因を記載します。
記載例(NG → OK)
NG:「疾患のため退院困難」NG:「高齢のため」
OK:「脳梗塞後遺症による右片麻痺があり、ADL全介助。独居のため退院後の介護体制が未整備。認知機能低下により本人の意向確認が難しい。」
② 退院後に利用が見込まれるサービス
作成時点では未定の場合も「訪問介護・訪問看護・デイケアの導入を検討中」のように、検討中であることも記載します。空白は避けましょう。
③ 療養支援内容(多職種の関わり)
各職種の関わりを列挙するだけでなく、「誰が・何を・いつまでに」が伝わる記載が理想です。
療養支援内容の記載例
・PT:起立・歩行訓練を週4回実施。退院時に4点杖歩行自立を目標・管理栄養士:嚥下調整食(コード3)で栄養管理。退院後の食形態について家族に指導予定
・歯科衛生士:口腔ケア指導週2回。義歯の調整状況を確認
・MSW:退院先(在宅 or 施設)の検討、ケアマネとの調整、要介護認定申請支援
患者・家族への説明と同意
計画書は「作って終わり」ではありません。患者・家族への説明・交付・同意の取得がセットです。
-
1
説明のタイミングを決める 家族の来院日・カンファレンスの機会に合わせて説明する。遠方家族には電話説明+郵送でも可(記録を残す)。
-
2
わかりやすい言葉で説明する 「退院困難要因」「予後」など専門用語をそのまま使わず、「今どんな状態で、退院に向けて何が課題か」を平易な言葉で伝える。
-
3
コピーを患者・家族に渡す 説明後、計画書のコピーを渡し「いつでも内容について質問できる」ことを伝える。
-
4
記録に残す 説明日時・場所・参加者・内容の要点をカルテまたは支援記録に記載する。
💡 意思決定支援が難しい患者への対応
認知症や意識障害がある場合、本人の署名が難しいケースがあります。その場合は「本人への説明内容・理解度・家族への代理説明」を記録に残すことで算定要件を満たせます。代理の方への説明内容・関係性も記録しておきましょう。
認知症や意識障害がある場合、本人の署名が難しいケースがあります。その場合は「本人への説明内容・理解度・家族への代理説明」を記録に残すことで算定要件を満たせます。代理の方への説明内容・関係性も記録しておきましょう。
よくある記載ミス・査定事例
⚠️ 査定につながりやすいポイント
- 「退院困難要因」が抽象的すぎる(「高齢」「重症」のみ)
- 療養支援内容にリハビリ・栄養・口腔の記載がない(令和6年度〜必須)
- 患者・家族への説明日の記録がない、または説明前に退院している
- 計画書の更新記録がなく、入院時のままになっている
- 退院後サービス欄が空白(「未定」でも記載が必要)
- 担当者名・職種の記載漏れ
作成前チェックリスト
✅ 作成・提出前に確認すること
- 入院後7日以内に着手できているか
- 退院困難要因が具体的に記載されているか
- 療養支援内容にリハビリ・栄養・口腔が含まれているか
- 患者・家族の意向(退院先の希望)が反映されているか
- 退院後に利用見込みのサービスが記載されているか(未定の場合も「検討中」と記載)
- 患者・家族への説明日・署名または記録があるか
- 担当者名・職種が記載されているか
- 計画変更時に更新・再説明の記録があるか