在宅ケアを担うケアマネジャー(介護支援専門員)との連携は、スムーズな退院と在宅生活の継続に欠かせません。令和8年度診療報酬改定では入院時の情報提供・退院前連携の要件が強化され、記録の残し方も含めた体制づくりがより重要になっています。本記事では、連絡タイミング・情報共有の内容・退院カンファレンスの進め方・退院・退所加算に対応した記録を現場目線で解説します。

📎 根拠・参照
入退院支援加算(A246)算定要件 / 退院・退所加算(介護保険居宅介護支援費)/ 令和8年度診療報酬・介護報酬同時改定 告示・通知
※ 算定要件・加算区分は改定のたびに変更されます。必ず最新の通知をご確認ください。

なぜ入院時からケアマネと連携するのか

在宅介護サービスを利用している患者が入院すると、担当ケアマネジャーはサービス調整を一時停止します。入院の情報がケアマネに届かないと、サービス事業者への連絡が遅れ、退院時に在宅環境が整っていないという事態が起こります。

💡 医療機関側が入院時連携を行うメリット: ① 入院前の在宅環境・介護状況をケアマネから入手できる(アセスメントの精度が上がる)
② 退院目標・退院先の方向性を早期に共有できる
③ 退院時に在宅サービスをスムーズに再開・変更できる
📎 「入院時情報連携加算」の正しい理解
「入院時情報連携加算」はケアマネジャー(居宅介護支援)側の介護報酬加算です。ケアマネが入院後速やかに医療機関へ在宅情報を提供したときにケアマネ側が算定するものであり、医療機関側の加算でも義務でもありません。

また、介護保険法上、入院の際にケアマネへ連絡する責任は本人または家族にあります(医療機関には法的な連絡義務はありません)。医療機関の役割は、本人・家族に連絡を促すこと、および連絡できない場合に代わって対応することです。

※ 診療報酬の入退院支援加算(A246)においても、医療機関がケアマネへ3日以内に連絡することは明示的な算定要件とはなっていません。
📎 入退院支援加算1・2の違いと連携要件
入退院支援加算には加算1(高評価・要件厳格)加算2(要件やや緩和)があり、専従職員の配置要件や連携実績の基準が異なります。
加算1:社会福祉士または看護師(入退院支援の専従者)の配置、退院支援に係る部署の設置、地域の関係機関との連携実績(退院・退所患者数の基準あり)等が要件。
加算2:専従職員の配置は求められるが、連携実績等の要件が加算1より緩やか。
※ ケアマネへの連絡・カンファレンス参加等の連携行為は、どちらの区分でも推奨されています。算定要件の詳細は必ず最新の告示・通知でご確認ください。

入院時の連絡タイミングと方法

  • 1
    入院当日〜翌日:ケアマネの有無を確認する 入院受付時・病棟入室時に「介護保険をお使いですか?担当のケアマネジャーはいますか?」と確認。担当ケアマネ名・連絡先を必ず記録する。
  • 💡 「ケアマネの名前がわからない」はよくある話:
    デイサービスや訪問介護のスタッフと違い、ケアマネジャーは月1〜2回の訪問が基本で、家族と顔を合わせる機会が少ないため、「どこどこに通所しています」とは言えてもケアマネの名前は知らない、というご家族は珍しくありません。担当が替わったばかりや新規担当の場合も同様です。

    そのような場合は以下の方法で確認できます。
    本人の介護保険証(介護保険被保険者証)を目視で確認する:居宅介護支援事業所名が明記されているほか、要介護認定区分と認定有効期間も記載されているため、更新時期の把握にも直結します。ケアマネからの情報提供でも介護度や有効期間の記載ミスが見受けられることがあるため、保険証の現物確認が最も確実です。
    市町村の介護保険担当課に問い合わせる:居宅介護支援事業所名を確認できます。
  • 2
    入院後速やかに:本人・家族にケアマネへの連絡を促す 介護保険法上、入院時にケアマネジャーへ連絡する責任は本人または家族にあります。医療機関側の法的義務ではありません。そのため、まずは「担当のケアマネジャーへ入院の連絡はしましたか?」と本人・家族に確認し、連絡できていなければ速やかに伝えるよう促しましょう。
  • 余力があれば医療機関から直接連絡する 本人・家族が連絡できない状況(意識障害・高齢独居・家族が遠方など)や、在宅情報を早期に入手したい場合には、医療機関側からケアマネへ直接連絡することも有効です。ただし全入院患者に対して行うのは業務量的に困難なため、優先度の高いケースに絞った対応が現実的です。
  • 3
    入院後7日以内:在宅情報の収集と介護保険証の目視確認 ケアマネから「フェイスシート」「サービス利用表」「居宅サービス計画書(ケアプラン)」等を FAX 等で受け取る。介護度・利用サービス・家族状況を確認してアセスメントに活かす。あわせて本人の介護保険証(介護保険被保険者証)を目視し、要介護認定区分・有効期間を直接確認する。ケアマネからの書面と照合して食い違いがないかを確かめることが重要。
  • 4
    退院の見通しが立った時点:カンファレンス日程の調整 退院の方向性が決まったらケアマネに連絡し、退院前カンファレンスの日程を調整する。退院予定日の1〜2週間前を目安に開催できると理想的。
  • 5
    退院日前日〜当日:最終確認の連絡 退院日が確定したらケアマネに連絡し、サービス再開日・変更内容・注意事項を伝える。退院後に在宅サービスが滞らないよう確認する。
⚠️ 注意:ケアマネへの連絡は「記録を残す」ことが必須です。電話の場合は日時・内容・対応者名を診療録または支援記録に記載してください。記録がないと加算の根拠が証明できません。

共有すべき情報の内容

入院時にケアマネから収集したい情報と、退院時にケアマネへ提供すべき情報は異なります。それぞれ整理しておきましょう。

【入院時】ケアマネから収集する情報

  • 介護保険の認定状況(要介護度・認定期間)
  • 現在利用している介護サービス(訪問介護・デイサービス・訪問看護 等)
  • 家族構成・キーパーソン(連絡先)
  • 在宅での生活状況(ADL・認知機能・住環境)
  • かかりつけ医・往診医・訪問看護ステーション名
  • 入院前のケアプランの目標・課題
  • 緊急性のある在宅調整事項(ペット・金銭管理・同居家族の状況 等)

【退院時】ケアマネへ提供する情報

  • 退院日・退院先(自宅 or 施設 等)
  • 退院時の疾患名・治療内容・今後の通院計画
  • 退院時の ADL・認知機能の変化(入院前との比較)
  • 在宅で必要な医療処置(服薬管理・創傷処置・経管栄養 等)
  • 退院後の注意事項・禁忌事項
  • 新たに導入が必要な介護サービス・福祉用具
  • 訪問看護指示書の発行予定(指示医・内容)
  • 次回外来日・緊急時の連絡先
📎 書式の活用
令和8年度改定では、入退院時の情報共有に「退院時情報提供書」等の様式活用が推奨されています。各都道府県や市区町村が統一様式を提供している場合があるため、地域のものを確認・活用してください。

退院カンファレンスの設定・進め方

退院前カンファレンスは、患者・家族・病院スタッフ・ケアマネ・在宅サービス事業者が一堂に会して退院後の支援方針を確認する場です。入退院支援加算の算定においても、カンファレンスの実施は重要な要件の一つです。

カンファレンスの参加者

  • 病院側:担当医・病棟看護師・入退院支援看護師・医療ソーシャルワーカー(MSW)・理学療法士 等(必要に応じて栄養士・薬剤師 等も)
  • 在宅側:担当ケアマネジャー・訪問看護師・訪問介護事業者 等(退院後に関わる関係者)
  • 患者・家族:本人参加が原則。状態に応じて家族代理も可。

カンファレンス開始時に必ず確認すること

⚠️ 挨拶と同時に「介護度・有効期間」を全員で確認する:
カンファレンス冒頭、自己紹介・挨拶のあとすぐに、「現在の介護度と認定有効期間を確認させてください」と場を仕切ってください。ケアマネが把握している情報と介護保険証の記載が一致しているか、参加者全員で共有します。
これが重要な理由は、区分変更申請の要否を判断する際に有効期間が直接関係するからです。残り期間が短ければ更新申請の段取りも同時に確認できます。入院時に書類で確認した内容と突き合わせる機会にもなります。

カンファレンスで決めること

  • 介護度・認定有効期間の確認(区分変更・更新申請の要否を判断)
  • 退院日・退院時間・退院手段
  • 退院後の在宅サービスの再開・変更・新規導入
  • 医療処置の継続・引き継ぎ(訪問看護指示の内容確認 等)
  • 福祉用具・住宅改修の手配状況
  • 緊急時・状態悪化時の対応フロー(連絡先・入院受入の確認)
  • 患者・家族の不安・困りごとへの対応策
  • ケアプランの変更方針(ケアマネが担当)
💡 オンライン(Web会議)でのカンファレンス: 令和8年度改定でも、オンラインによるカンファレンスは対面と同等に評価されます。移動が困難な訪問介護事業者やケアマネがいる場合は、積極的に活用しましょう。ただし参加者全員の記録(氏名・職種・接続方法)を残すことが必要です。

退院・退所加算に対応した記録の残し方

ケアマネ側が算定できる「退院・退所加算」(居宅介護支援費)は、令和8年度改定で5区分に整理されています。病院側の連携が加算の根拠となるため、記録の残し方を把握しておきましょう。

📎 退院・退所加算(令和8年度改定)の概要
Ⅰイ:退院情報提供のみ(書面 or 口頭)
Ⅰロ:退院前カンファレンスへの参加(病院担当者との面談)
Ⅱイ:退院情報提供+カンファレンス参加(医師・看護師等)
Ⅱロ:Ⅱイに加えて入院中3回以上の面接・情報収集
Ⅲ:退院前訪問指導と連携(医療機関の訪問指導加算との連動)
※ 区分・点数は最新の告示で必ず確認してください。

病院側が残すべき記録

  • 1
    入院時連絡の記録 連絡日時・ケアマネ氏名・事業所名・伝達内容・手段(電話 / FAX / 対面)を支援経過記録に記載。
  • 2
    情報収集・提供の記録 ケアマネから受け取った書類(フェイスシート等)のコピーを支援記録に添付。提供した書類名・提供日・相手を記録。
  • 3
    カンファレンスの記録 開催日時・場所(またはオンライン)・参加者全員の氏名と職種・協議内容・決定事項を記録。署名不要の場合でも参加者リストは必須。
  • 4
    退院時情報提供の記録 退院時情報提供書(様式)を作成し、ケアマネへ交付した日付・手段を記録。ケアマネが退院・退所加算を算定する際の根拠書類となる。
⚠️ 記録の注意点:「〇〇ケアマネに連絡済」だけでは不十分です。「何を・いつ・どのように伝えたか」が具体的にわかる記録を残してください。指導や査定の際も、記録の具体性が問われます。

退院後のフォローアップ連絡

退院後も連携を継続することで、在宅での問題を早期発見し再入院を予防できます。令和8年度改定では退院後フォローアップの重要性が強調されており、入退院支援加算の評価にも反映されています。

退院後フォローアップの目安

  • 退院後3〜7日:電話でケアマネに状況確認(在宅サービス開始状況・患者の様子)
  • 退院後2〜4週間:在宅状況の共有(必要に応じてカンファレンス、または訪問看護との連絡)
  • 状態変化時:ケアマネから病院への連絡ルートを事前に確認し、対応窓口(MSW・外来看護師 等)を伝えておく
  • 再入院時:ケアマネへ速やかに連絡(入院時と同様のフロー)
💡 「顔の見える関係」が連携の質を高める: 定期的な情報交換や地域の事例検討会への参加など、日常的なコミュニケーションが緊急時の連携を円滑にします。多職種連携パスや地域の連携ツールが整備されている場合は積極的に活用しましょう。

よくある連携トラブルと対処法

よくあるトラブル 対処法
担当ケアマネの連絡先がわからない 入院時の問診票に「担当ケアマネ名・連絡先」の記入欄を設ける。家族からも確認。
連絡してもケアマネがつかまらない FAX と電話の両方で連絡し、記録を残す。折り返し依頼の内容(緊急度)を明示する。
退院日ギリギリに連絡が来て在宅が整わない 退院見通しが立った段階(2週間以上前)でケアマネに連絡。退院調整会議を早めに設定。
介護認定未申請の患者が退院を迎える 入院後早期にスクリーニングし、介護保険未申請の場合は入院中に申請手続きを支援。地域包括支援センターへ連絡し暫定ケアプランを依頼。
ケアマネがカンファレンスに来られない Web会議(Zoom 等)でのオンライン参加を提案。音声通話でも参加記録を残せる。

連携チェックリスト

入院から退院後まで、ケアマネとの連携の抜け漏れを防ぐためのチェックリストです。

🏥 入院時

  • 患者の担当ケアマネ名・連絡先を確認した
  • 入院後3日以内にケアマネへ入院を連絡した(記録あり)
  • ケアマネからフェイスシート・ケアプラン等を受け取った
  • 入院前の在宅サービス・介護度を退院支援計画書に反映した

📋 入院中〜退院調整

  • 退院の方向性が決まった時点でケアマネに連絡した
  • 退院前カンファレンスの日程をケアマネと調整した
  • カンファレンスに必要な在宅関係者(訪問看護・訪問介護 等)が招集されている
  • 新規サービス・福祉用具の手配状況をケアマネと確認した
  • 訪問看護指示書の発行予定を担当医と調整した

🏠 退院時・退院後

  • 退院時情報提供書(書面)をケアマネに交付した(記録あり)
  • カンファレンスの記録(参加者・決定事項)を支援記録に残した
  • 退院後3〜7日以内にケアマネへ在宅状況の確認連絡をした
  • 再入院・状態悪化時の連絡ルートをケアマネと共有した