退院や転院が決まったのに、「車椅子に座っているのがつらい」「酸素を使っているので、ふつうのタクシーでは心配」——そんなとき、移動手段のひとつになるのが「民間救急」です。この記事では、民間救急とはどんなサービスなのか、料金や探し方まで、やさしく解説します。
民間救急は、「緊急ではない」方のための有料の移動サービスです。急な胸の痛み・強い息苦しさ・意識がおかしいなど、緊急のときは迷わず119番に連絡してください。
民間救急とはどんなサービス?
民間救急は、正式には「患者等搬送事業(かんじゃとうはんそうじぎょう)」と呼ばれるサービスです。寝たきりの方や、体の不自由な方が、病院への入退院・通院・転院、施設への移動などをするときに、ベッド(ストレッチャー)や車椅子のまま乗れる専用の車で送ってくれます。
「救急」という名前がついていますが、消防の救急車とは違い、緊急ではない方が対象です。
民間救急の事業者は、地域の消防本部が「乗務員の講習を受けているか」「車や設備は大丈夫か」などを確認して認定しています。認定を受けた事業者は「患者等搬送事業者」と呼ばれます。利用するときは、この認定を受けた事業者から選ぶと安心です。
救急車・福祉タクシーと何が違うの?
| 移動手段 | どんな人向け? | 費用 |
|---|---|---|
| 消防の救急車 | 緊急に治療が必要な人 | かからない(公費) |
| 民間救急 | 緊急ではないが、寝たままの移動や医療的なケアが必要な人 | 自己負担(有料) |
| 福祉・介護タクシー | 主に車椅子で「座って」移動できる人 | 自己負担(有料) |
福祉タクシー・介護タクシーは、事業者によって呼び方や介助の内容、使える車両が異なります。車椅子で移動できる場合でも、段差の介助や、複数人での抱きかかえ(移乗)が必要なときは、事前に対応できるか確認しましょう。
看護師さんは乗っているの?
「民間救急なら看護師さんが付いてくれる」と思われがちですが、看護師の同乗は必須ではありません。ふだん乗務しているのは、消防の講習を修了した搬送のスタッフで、看護師とは限りません。
事業者によっては、別料金で看護師や救急救命士の同乗を頼めます。酸素・たんの吸引・点滴など医療的なケアが必要な場合は、予約のときに次のことを確認しましょう。
✅ 主治医の指示書が必要か
✅ 移動中にできる医療的なケアは何か
✅ 酸素・吸引器などの準備ができるか
✅ 具合が悪くなったとき、どう対応してくれるか
どんなときに使えるの?
🏥 緊急ではない転院(別の病院へ移るとき)
🏠 病院から自宅や施設への退院
🚗 通院や検査のための移動
🛏️ ストレッチャーに横になったまま移動したいとき
💨 酸素や吸引などの医療的な管理が必要なとき
🗾 遠くの病院や施設への長距離の移動
🌸 自宅への一時帰宅や外出
「転院なら救急車を呼べばいいのでは?」と思うかもしれませんが、消防の救急車が転院で使えるのは、緊急に別の病院で治療が必要で、ほかに手段がない場合などに限られます。日にちが決まっている退院や転院では、民間救急などの利用を検討します。
料金はどのくらい?
民間救急は有料で、料金は事業者ごとに違います。一般的には、次のような費用の組み合わせで決まります。
🅿️ 迎車料金・待機料金
🛏️ ストレッチャー・車椅子などの使用料
🤝 乗り降りの介助・階段の介助などの料金
👩⚕️ 看護師や救急救命士の同乗料
💨 酸素・吸引器などの機器の使用料
🛣️ 高速道路料金・駐車料金
🌙 深夜・早朝の割増料金
健康保険の「移送費」が使える場合も
民間救急の費用は、使えば自動的に健康保険からお金が戻ってくるわけではありません。ただし、病気やけがで移動がとても難しい方が、医師の指示で一時的・緊急的に移送された場合など、一定の条件を満たすと、健康保険の「移送費」の対象になる可能性があります。
申請には医師の意見書や領収書などが必要です。利用する前に、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・市区町村の国保など)に確認してみましょう。
どうやって探せばいい?
お住まいの地域の消防局・消防本部のホームページに、認定を受けた事業者の一覧が載っていることが多いです。
-
1
消防庁の公式ページを開く 総務省消防庁「患者等搬送事業」のページ(この記事の最後にリンクがあります)を開きます。
-
2
事業者一覧のリンクを探す 「患者等搬送事業者の認定状況等」まで画面を下げて、「各消防本部のホームページに掲載されている事業者一覧」を開きます。
-
3
出発する場所の消防本部を選ぶ 都道府県の中から、出発地(退院なら「いま入院している病院」の場所)を担当する消防本部を探します。
-
4
事業者と連絡先を確認する 消防本部のページで、認定事業者の名前と電話番号を確認して連絡します。
見つからないときは、地域の消防本部の代表番号に問い合わせできます(119番は使いません)。入院中なら、病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援の担当者に相談するのがいちばん確実です。
予約のときに伝えること
事業者に連絡するときは、次のことをメモにまとめておくとスムーズです。
✅ 出発地と到着地(病院名・住所)
✅ 病名と、いまの体の状態
✅ 座っていられるか、ストレッチャーが必要か
✅ 乗り降りに何人の介助が必要か
✅ 酸素・吸引・点滴などの有無
✅ 看護師の同乗が必要か
✅ 自宅や施設の階段・段差・エレベーターの有無
✅ 同乗するご家族の人数と荷物の量
✅ 到着してほしい時刻・支払い方法
体の状態など詳しい内容は、病院の担当者から事業者へ伝えてもらえることも多いので、わからない部分は無理にご自身で調べなくて大丈夫です。
まとめ・相談先
✅ 民間救急は、緊急ではないけれど移動が難しい方のための有料の搬送サービス
✅ ストレッチャー(寝たまま)でも移動できる
✅ 看護師が必ず乗っているわけではない。必要なら別料金で同乗を依頼できる
✅ 料金は事業者ごとに違うので、見積りと追加料金の条件を確認する
✅ 事業者は消防本部の公式ページから探せる
✅ 緊急のときは迷わず119番
「うちの場合はどの方法がいいの?」と迷ったら、一人で抱え込まず、主治医・病棟の看護師・医療ソーシャルワーカー・退院支援の担当者に相談してください。患者さんの状態に合った移動方法を、費用のことも含めて一緒に考えてくれます。
- 総務省消防庁「患者等搬送事業」
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate013.html - 全国健康保険協会「移送費」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/transfer_cost/index.html
※本記事は一般的な情報をまとめたものです。患者さんの状態や地域、事業者によって対応が異なります。個別の搬送方法は、主治医や関係する専門職、事業者へご確認ください。