「病院では三食きちんと出ていたけれど、家に帰ったらどうなるだろう」。退院を前にして、ご本人もご家族も、意外と大きな不安を感じるのが食事のことです。
買い物に行けない。台所に立つのがつらい。塩分やたんぱく質の制限がある。一人だと作る気になれない。こうした事情が重なると、食事は簡単に細ってしまいます。この記事では、退院後の食事を支える方法を整理したうえで、中心になる配食サービスの選び方と使い方を紹介します。
退院後、食事が細る理由
厚生労働省の資料では、高齢の方について年齢が上がるほど低栄養傾向の方の割合が高くなること、そして低栄養は健康寿命を縮めるリスクになることが示されています。退院後は、次のような事情が重なりやすい時期です。
✅ 立って調理するのがつらい、火を使うのが不安
✅ 1回にたくさん食べられない
✅ 噛む力・飲み込む力が落ちて、食べにくい食品がある
✅ 塩分やたんぱく質の制限があり、何を食べていいか分からない
✅ 一人だと作る気になれない、食べる気にならない
食事を支える5つの方法
「食べること」を支える方法は、配食だけではありません。組み合わせて考えます。
| 方法 | できること | 相談先 |
|---|---|---|
| 🍱 配食サービス | できあがった食事を自宅まで届けてもらう。療養食や食形態の調整に対応する事業者も | 市区町村・ケアマネジャー・地域包括支援センター |
| 🧹 ヘルパー (訪問介護) |
買い物の代行、調理。ご本人と一緒に作るという使い方もできます。介護保険の「生活援助」として利用(要介護認定が必要) | ケアマネジャー |
| 🧊 冷凍弁当・ 冷凍食品の宅配 |
冷凍で届いて冷凍庫に保存。食べたいときに温めるだけ。まとめて届くので受け取りの手間が少ない | ご自身・ご家族で申し込み(介護保険の手続きは不要) |
| 🏢 通所サービス | デイサービス等で昼食が出る。人と食べることで食が進む方も | ケアマネジャー |
| 🛒 宅配・地域の支え合い | スーパーの宅配、ネットスーパー、生協。地域の会食会・食事サロン | 地域包括支援センター・社会福祉協議会 |
配食サービスとは
配食サービスは、調理された食事を自宅まで届けてくれるサービスです。買い物や調理が難しい方の日々の食事を支えるとともに、手渡しによる安否確認(見守り)の役割も担っています。
ただし、市区町村が行う「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)の中で、栄養改善を目的とした配食が実施されている場合があります。この場合は自治体の助成が入り、負担が軽くなることがあります。お住まいの市区町村によって、あるかないかが分かれます。
配食サービスの3つの種類
市区町村が総合事業などとして実施しているもの。一人暮らしの高齢者などが対象で、安否確認とセットになっていることが多く、費用の助成があります。回数に上限が設けられている場合があります。
🏢 ②民間事業者の配食サービス
高齢者向けの弁当を専門に扱う会社、宅配弁当チェーンなど。療養食や食形態の調整に対応しているところが多く、回数の自由度が高いのが利点です。費用は全額自己負担。
🤝 ③社会福祉協議会・ボランティア団体
地域の社会福祉協議会やNPO、ボランティアグループが行うもの。低額で、顔なじみの関係ができるのが特徴です。実施日が限られることがあります。
制限がある方・食べにくい方への対応
「うちは腎臓の食事制限があるから無理」「きざみ食でないと食べられないから」。そう思って諦める必要はありません。配食には次の対応があります。
エネルギー・たんぱく質・塩分などを調整した食事。糖尿病・腎臓病・心臓病・透析などで食事療法が必要な方向けです。
🥣 物性等調整食
かたさ・まとまりやすさなどを調整した食事。きざみ食、やわらか食、ムース状の食事など、噛む力・飲み込む力が落ちた方向けです。
医師や管理栄養士から栄養食事指導を受けている場合は、そのときにもらった食事の計画(指示された塩分量など)を、そのまま事業者に伝えてください。厚生労働省のガイドラインでも、利用者が内容を正確に伝えることの重要性が示されています。
冷凍弁当という選択肢
最近は、高齢者向けに限らず一般向けにも、冷凍の弁当を宅配するサービスが増えました。スーパーやコンビニの冷凍食品にも、栄養バランスを整えた弁当タイプのものが並んでいます。塩分やたんぱく質に配慮した商品もあります。
| 毎日届く配食(当日調理) | 冷凍弁当の宅配 | |
|---|---|---|
| 受け取り | 毎回、決まった時間に在宅が必要 | 週1回などまとめて届くので在宅の負担が少ない |
| 食べるとき | 届いたものをそのまま | 冷凍庫から出して温める(電子レンジの操作ができるかが分かれ目) |
| 見守り | 手渡しなら安否確認になる | まとめ配達のため、見守りの機能は弱い |
| 向いている方 | 毎日の食事を確実に届けたい方、見守りも必要な方 | 食べる時間が不規則な方、冷凍庫に余裕がある方、家族が離れて暮らしている方 |
ただし確認したいことが2つあります。冷凍庫に入るだけの空きがあるか、そしてご本人が電子レンジを使えるか。ここがつまずくと、冷凍庫に弁当がたまっていくだけになります。
ヘルパーと「一緒に作る」という方法
訪問介護というと「ヘルパーさんが作ってくれる」と思われがちですが、ご本人と一緒に台所に立つという使い方もあります。
🧑🍳 献立を一緒に考えて、買い物のメモを作る
🧑🍳 座ったままできる作業を本人が担当する
こうした形は、できることを続けるための支援です。全部やってもらうより手間はかかりますが、「自分の食事を自分で作れている」という感覚が、食欲そのものを支えることがあります。退院直後で自信をなくしている方には、とくに意味のある関わりです。
見守りとしての配食
配食サービスのもう一つの大切な役割が安否確認です。手渡しでの配達なら、配達員が毎回顔を見ます。
✅ 前回の弁当が手つかずで残っていれば、食べられていないことが分かる
✅ 決まった時間に人が来ることが、生活のリズムになる
費用
💴 自治体の配食:自治体の助成があり、1食あたりの自己負担が抑えられることがあります。金額・対象・回数の上限は市区町村ごとに異なります
💴 社協・ボランティア:低額に設定されていることが多い
💴 配達料:食事代に含まれる場合と、別にかかる場合があります
金額は地域と事業者によって幅があります。「1食いくらか」だけでなく、「配達料は含むか」「1回の注文数に条件はあるか」もあわせて確認してください。
事業者を選ぶときの確認ポイント
厚生労働省は、高齢の方向けの配食について「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」を定めています。事業者向けのものですが、選ぶ側の目安としても使えます。
✅ 注文するときに、体の状態や食事の希望を聞いてくれるか(ガイドラインは注文時のアセスメントを求めています)
✅ 利用を始めたあとも、様子を確認してくれるか(開始後数週間以内に1回、その後も年1〜2回程度のフォローが望ましいとされています)
✅ 必要な療養食・食形態に対応しているか
✅ 手渡しか、置き配か(見守りが必要な場合)
✅ 配達エリアに入っているか、配達の曜日・時間帯
✅ お試し・試食ができるか(味や量が合うかは、食べてみないと分かりません)
✅ 急なキャンセルや、入院したときの休止に対応できるか
使うときの注意点
・配食だけで食事のすべてを賄うのは現実的ではありません:厚生労働省のガイドラインにもそう書かれています。配食以外の食事をどうするかも一緒に考えます
・1食を分けて食べない:配食の1食分は、その方が1回で食べきることを前提に栄養が調整されています。2回に分けたり、家族で分け合ったりすると、必要な栄養が足りなくなります
・体の状態が変わったら伝える:「量が多い/少ない」「食形態が合わない」「食べる量が減ってきた」。こうした変化は、遠慮せず事業者に伝えてください
・医師・管理栄養士の指導が変わったら、食種も変える:指導内容が変わったのに配食が前のままでは意味がありません
・自治体の配食には対象条件があります:「一人暮らしであること」「要支援・要介護であること」などの条件や、回数の上限が設けられていることがあります
入退院支援で活用する場面
✅ 食事療法(腎臓病食・糖尿病食など)が必要だが、家族が作るのは負担が大きい
✅ 嚥下機能が落ちて、食形態の調整が必要になった
✅ 介護する家族の負担を減らしたい
✅ 退院後の安否確認の手段がほしい
✅ 入院前から食事が細っていて、低栄養が心配
気をつけたいのは「食べられる形」で退院させることです。病院ではきざみ食やとろみ付きが出ていたのに、自宅ではそれが用意できない。この段差が、そのまま低栄養や誤嚥につながります。退院前カンファレンスでは「家では誰が、どんな形の食事を用意するのか」まで具体的に決めておくことが大切です。
また、配食の申し込みから開始まで数日かかることもあります。退院日から逆算して手配しておくと、帰った日から食事がつながります。
相談先
🏢 地域包括支援センター:介護保険をまだ使っていない方、65歳以上の方の相談窓口
🏛️ 市区町村の高齢者福祉・介護保険の窓口:自治体の配食サービスや助成の有無について
🍚 病院の管理栄養士:必要な食事の内容・食形態について。退院前に確認を
🏥 病院の相談窓口・地域連携室:入院中の方はこちらへ。医療ソーシャルワーカー(MSW)が配置されている病院では、サービスの調整について相談できます
まとめ
✅ 退院後は食事が細りやすい時期。高齢の方では食べすぎより低栄養が問題
✅ 食事を支える方法は配食・ヘルパー・冷凍弁当・通所・地域の支え合い。組み合わせて考える
✅ 配食サービスは介護保険の給付ではありません。ただし自治体の総合事業として助成がある場合があります
✅ 療養食・きざみ食などにも対応できます。必要な形態を退院前に確認して、事業者に正確に伝える
✅ 手渡しの配達なら見守りにもなります(置き配だとこの機能はなくなります)
✅ 配食だけで全部を賄うのは現実的ではありません。1食を分けて食べるのも避けてください
✅ 冷凍弁当なら、まとめて届いて温めるだけ。離れて暮らす家族が送るという使い方も
✅ ヘルパーには「一緒に作る」という頼み方もあります。希望はケアマネジャーへ
✅ まずは週2〜3回から試す。味・量・形態が合うか確かめてから増やす
- 厚生労働省「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158814.html - 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192992.html
根拠法令:介護保険法第115条の45(介護予防・日常生活支援総合事業)。栄養改善を目的とした配食や見守りは、総合事業の「その他の生活支援サービス」に位置づけられています。配食の栄養管理については、厚生労働省「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」(事業者向け)が定められています。
※本記事は2026年7月時点の情報です。自治体の配食サービスの有無・対象条件・助成額、民間事業者の料金や対応内容は地域によって大きく異なります。実際の利用にあたっては、お住まいの市区町村やケアマネジャーにご確認ください。