「家に帰りたいけど、一人で大丈夫なのか心配」「夫(妻)も高齢で、介護してもらうのが申し訳ない」——そうした不安を抱えながら退院を迎える方は、決して少なくありません。「一人だから無理」ということはありません。準備と相談をしっかり進めることで、一人暮らしでも老老介護でも、安心して自宅に帰ることができます。

一人暮らしで退院するときの不安とその対応

一人暮らしの方が退院するとき、多くの方が次のような不安を感じます。それぞれに対応策があります。

「急に具合が悪くなったら、誰も気づいてくれない」

→ 訪問看護・ヘルパーが定期的に自宅を訪れることで、体の変化を早めに察知できます。
→ 緊急通報装置(ボタンを押すだけで救急や相談員につながる機器)を設置する方法もあります。介護保険でレンタルできる場合があります。
→ 「緊急時の連絡先リスト」を作って、見えやすい場所に貼っておきましょう。
「食事の準備ができない・栄養が偏りそう」

→ 訪問介護(ヘルパー)に食事準備を頼めます。
→ 配食サービス(宅配弁当)を利用する方法もあります。介護保険外ですが比較的安価です。
→ デイサービスに通うことで、昼食を確保することもできます。
「掃除・洗濯・ゴミ出しが自分でできない」

→ ヘルパーに生活援助として頼めます(介護保険で1〜3割負担)。
→ 地域の総合事業(住民ボランティア等による支援)が使える場合もあります。
「一人でいると孤独・気持ちが沈む」

→ デイサービスは「外出・人との交流・リハビリ」をまとめて提供してくれます。週2〜3回の利用で生活リズムが整います。
→ 地域のサロン・通いの場(認定なしでも参加できる)も選択肢です。

老老介護で退院するときの不安とその対応

高齢の配偶者や家族が介護する「老老介護」の場合、介護する側の体への負担も大きな問題です。一人で抱え込まず、サービスをうまく使うことが大切です。

「配偶者が入浴やトイレの介助をするのが体力的にきつい」

→ 入浴はデイサービスで入浴介助を受けられます(週1〜2回でも大きな助けに)。
→ 訪問入浴介護(浴槽を持ち込んで自宅で入浴介助)という選択肢もあります。
→ トイレは手すりや福祉用具を使って、できるだけ本人が自立できるよう工夫することで、介護者の負担を減らせます。
「介護している配偶者が体を壊さないか心配」

→ ヘルパーや訪問看護を入れることで、介護者の「休める時間」をつくることが重要です。
→ ショートステイ(短期入所)を定期的に使うことで、介護者が休息できます(「レスパイト」といいます)。
→ 「介護しながら自分も体が心配」という場合は、MSWやケアマネジャーに率直に伝えてください。
⚠️ 介護者が倒れると、二人とも困ります
老老介護では、介護している側が先に体調を崩すケースがあります。「まず自分が元気でいること」が、最大の介護です。サービスを使うことは、二人のための選択です。

退院後に使える主なサービス

困りごと 使えるサービス
体の管理・医療的なケア 訪問看護・訪問診療(在宅医)
食事・掃除・洗濯・ゴミ出し 訪問介護(ヘルパー)の生活援助
入浴介助 デイサービス・訪問入浴介護
リハビリを続けたい 訪問リハビリ・通所リハビリ(デイケア)
外出・人との交流がしたい デイサービス・地域のサロン・総合事業
介護者の休息時間を確保したい ショートステイ(短期入所)
食事の宅配がほしい 配食サービス(介護保険外・比較的安価)
急変時にすぐ対応してほしい 緊急通報装置・夜間対応型訪問介護
💡 「認定がまだ」でも使えるサービスがあります
介護保険の認定が出ていなくても、市区町村の総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)や地域のサロン・配食サービスは利用できる場合があります。まずMSWや地域包括支援センターに相談しましょう。

緊急時への備え

一人暮らしの方に特に重要なのが、「何かあったときの備え」です。退院前に準備しておきましょう。

退院前に準備しておくこと:

📋 緊急連絡先リストを作る
かかりつけ医・訪問看護・ケアマネジャー・救急(119)の番号を紙に書いて、冷蔵庫の扉など目立つ場所に貼る。

🔔 緊急通報装置の設置を検討する
ボタンひとつで相談員や救急に連絡できる機器。市区町村や社会福祉協議会が提供していることもあります(要相談)。

🗝️ 鍵の保管方法を決めておく
倒れたとき、外から入れるよう、キーボックスの設置やケアマネジャーへの鍵の預け方を相談しておきましょう。

🏥 「救急を呼ぶ目安」を確認する
退院前に主治医・訪問看護師から「こんな症状が出たら119番」という目安を聞いておく。

📱 定期的な安否確認の仕組みをつくる
ヘルパー・訪問看護の定期訪問のほか、「毎朝電話してもらう」など、人とつながる仕組みをつくる。

「帰れない」と感じたら施設という選択肢も

準備を整えても、「やっぱり自宅では難しい」という状況もあります。施設への入所は「あきらめ」ではなく、より安全・安心な生活を選ぶ判断です。

選択肢として知っておきたい施設:

🏠 特別養護老人ホーム(特養)
要介護3以上が対象。介護保険で利用でき、比較的費用が抑えられる。ただし待機期間が長い場合があります。

🏠 老人保健施設(老健)
リハビリを受けながら自宅復帰を目指す施設。在宅生活への橋渡しとして使えます。

🏠 グループホーム
認知症の方が少人数で共同生活を送る施設。

🏠 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
民間の施設。費用の幅が広く、医療対応の程度もさまざまです。

※ 施設の種類・費用・空き状況はケアマネジャーやMSWに相談してください。
💡 「まず在宅で試して、無理なら施設」という流れでも大丈夫
退院してみてから「やはり在宅は難しい」と気づくこともあります。ショートステイを繰り返しながら施設への移行を検討するなど、段階を踏むことができます。一度決めたことが全て、ということはありません。

退院前に相談すべき人

相談したいこと 誰に話すか
「一人で帰れるか不安」 MSW・退院支援看護師
「介護者(配偶者)の負担が心配」 MSW・退院支援看護師
「退院後に使えるサービスを知りたい」 MSW・ケアマネジャー
「緊急通報装置や鍵の管理が心配」 MSW・ケアマネジャー・地域包括支援センター
「施設も検討したい」 MSW・ケアマネジャー
「介護保険の申請をしたい」 MSW・市区町村窓口・地域包括支援センター
💡 「一人で悩まないで」が、最大のメッセージです
一人暮らしや老老介護での退院は、確かに不安が多いです。でも、それを支えるための専門職・制度・地域のサービスがあります。「こんなこと相談していいのかな」と思わず、まず病院の担当者(MSWや退院支援看護師)に話してみてください。一緒に考えてもらえます。