「健康保険証を出せば、窓口で払うのは3割」。健康保険について、それ以上のことはあまり知られていません。けれど同じ「健康保険」でも、どこに加入しているかで使える給付は違います。この記事では、健康保険が何をしてくれるのかから始めて、6種類の違いを一覧で見ていきます。

健康保険は、3つのことをしてくれます

日本では、誰もが何らかの公的な医療保険に入っています(国民皆保険)。その健康保険がしてくれることは、大きく3つです。

1
窓口で払う額を減らす

医療費の1〜3割だけを払えばよくなります。年齢と所得で割合が決まります。

2
ひと月の上限を決める

自己負担が上限を超えた分は戻ってきます(高額療養費制度)。

3
現金を支給する

働けない間の生活を支える傷病手当金、出産育児一時金、亡くなったときの給付など。

💡 ①と②は、どの健康保険でもほぼ同じです。窓口の負担割合も、高額療養費の上限額も、加入先による差はありません。

違いが出るのは③、現金の給付です。とくに傷病手当金があるかどうか。ここが、健康保険の種類を知っておく意味そのものです。

健康保険は、大きく2つに分かれます

6種類あると聞くと複雑に思えますが、もとをたどると2つのグループです。この分かれ方がわかると、あとは整理できます。

GROUP A
働く人の保険

被用者保険(ひようしゃほけん)

  • 協会けんぽ
  • 健康保険組合
  • 共済組合
勤め先を通じて入る保険です。保険料は会社と本人が半分ずつ出します。
だから働けなくなったときの補償(傷病手当金)があります。
GROUP B
地域・職業の保険

国民健康保険・後期高齢者医療制度

  • 市区町村の国民健康保険
  • 国民健康保険組合
  • 後期高齢者医療制度
住んでいる地域や、同じ職業の団体で入る保険です。会社が保険料を負担する相手がいません。
そのため傷病手当金は原則ありません。
💡
「会社の保険か、そうでないか」。おおまかには、この一点です。会社員・公務員は Group A、自営業・退職後・75歳以上は Group B に入ります。傷病手当金の有無も、ほぼこの線で分かれます。

まず、自分の加入先を確かめる

手元の資格確認書、または「資格情報のお知らせ」を見てください。マイナ保険証をお使いの方は、マイナポータルでも確認できます。

見るところは「保険者名称」。そこに書かれている名前で、種類がわかります。

✅ 全国健康保険協会 → 協会けんぽ
✅ 〇〇健康保険組合 → 健康保険組合
✅ 〇〇共済組合 → 共済組合
✅ 〇〇市(区・町・村) → 市区町村の国民健康保険
✅ 〇〇国民健康保険組合 → 国民健康保険組合
✅ 〇〇県後期高齢者医療広域連合 → 後期高齢者医療制度
⚠️ 「会社の健康保険」とひとくくりに呼ばれがちですが、協会けんぽ・健康保険組合・共済組合は別のものです。とくに健康保険組合には、独自の上乗せ給付(付加給付)があることがあります。知らずに使っていない方が、少なくありません。

【一覧表】6種類の違い

同じ項目で並べると、違いがはっきりします。

種類 誰が入るか 傷病手当金 付加給付 退職後に続けられるか 亡くなったとき
協会けんぽ働く人の保険 主に中小企業で働く人と、その家族 ● あり — なし 任意継続で最長2年 埋葬料・埋葬費
健康保険組合働く人の保険 主に大企業・業界団体で働く人と、その家族 ● あり △ 組合による 任意継続で最長2年 埋葬料(上乗せあり)
共済組合働く人の保険 公務員、私立学校の教職員など ● あり ● あり 任意継続組合員として最長2年 埋葬料
市区町村の
国民健康保険地域の保険
自営業・フリーランスの人、退職して他の健康保険に入っていない人など — 原則なし — なし — 葬祭費(市区町村による)
国民健康保険組合職業の保険 医師・歯科医師・薬剤師・建設業など、同じ業種の人 △ 組合による △ 組合による — 葬祭費
後期高齢者
医療制度地域の保険
75歳以上の人(一定の障害がある人は65歳以上) — 原則なし — なし — 葬祭費(地域による)

● あり / △ 加入先によって異なる / — なし  ※ スマホでは表を横にスクロールできます。

💬 現場から:入院のご相談で、私が最初に確認することのひとつがどの健康保険に入っているかです。会社員の方なら傷病手当金で収入の一部が補えますが、国民健康保険の方にはその仕組みがありません。同じ病気・同じ入院でも、「しばらく働けない」とわかったときに打てる手が変わります。だからこそ、早い段階で確かめておきたいのです。

6種類、それぞれの特徴

働く人の保険

協会けんぽ

主に中小企業で働く人と、その家族。全国健康保険協会が運営しており、加入者数はいちばん多い保険です。

傷病手当金
あり
付加給付
なし
退職後
任意継続で最長2年
亡くなったとき
埋葬料・埋葬費
働く人の保険

健康保険組合

主に大企業や、同じ業種の会社で働く人と、その家族。会社や業界がつくった独自の組合が運営しています。

傷病手当金
あり
付加給付
組合によってあり
退職後
任意継続で最長2年
亡くなったとき
埋葬料(上乗せあり)
働く人の保険

共済組合

公務員や、私立学校の教職員などが加入します。

傷病手当金
あり
付加給付
あり(内容は組合による)
退職後
任意継続組合員として最長2年
亡くなったとき
埋葬料
地域の保険

市区町村の国民健康保険

自営業やフリーランスの人、退職して他の健康保険に入っていない人などが加入します。お住まいの市区町村が窓口です。

傷病手当金
原則なし
付加給付
なし
退職後
—(退職と関係なく加入する保険)
亡くなったとき
葬祭費(市区町村による)
職業の保険

国民健康保険組合

医師、歯科医師、薬剤師、建設業など、同じ業種の人が加入します。同じ「国民健康保険」という名前ですが、市区町村の国保とは別の団体です。

傷病手当金
組合によってあり
付加給付
組合独自の給付あり
退職後
—
亡くなったとき
葬祭費
地域の保険

後期高齢者医療制度

75歳以上の人(一定の障害がある人は65歳以上)が加入します。75歳の誕生日に、それまでの健康保険から自動的に移ります。

傷病手当金
原則なし
付加給付
なし
退職後
—
亡くなったとき
葬祭費(地域による)

どの健康保険でも使えるもの

✅ 高額療養費制度…ひと月の医療費の自己負担が上限を超えたら、超えた分が戻ってきます。どの健康保険にもあります
✅ 出産育児一時金…出産したときに支給されます(後期高齢者医療制度を除く)
💴 高額療養費制度は、入院・外来どちらも対象です。令和8年(2026年)8月から上限額が引き上げられ、あわせて「年間上限」という新しい仕組みができました。所得区分ごとの金額や外来での使い方は、限度額適用認定証の記事をご覧ください。

👶 出産育児一時金は、産科医療補償制度に加入している医療機関での妊娠22週以降の出産で1児につき50万円です(22週に満たない場合は48.8万円。令和5年4月1日以降の出産)。

退職するときは、ここが変わります

⚠️ 会社員から国民健康保険に移ると、傷病手当金がない保険に変わります。働けない間の収入を補う仕組みが、なくなるということです。Group A から Group B へ移る、ということでもあります。

退職後の健康保険には、任意継続・国民健康保険・ご家族の扶養という3つの選択肢があり、手続きの期限も保険料も大きく違います。入院中に退職を考えている方は、次の記事もあわせてご覧ください。

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退職するときの健康保険
〜任意継続・国保・扶養のどれを選ぶか

3つの選択肢を比べ方から解説します。手続きの期限(任意継続は20日以内、国保は14日以内)、保険料の比べ方、扶養に入れる条件、そして退職後も傷病手当金を受け取れる場合まで。

まとめ

この記事のまとめ:

✅ 健康保険がしてくれることは3つ。窓口負担を減らす・月の上限を決める・現金を支給する。前の2つはどの保険でもほぼ同じで、違いが出るのは現金の給付
✅ 6種類は、もとをたどると「働く人の保険」と「地域・職業の保険」の2グループ
✅ いちばん大きな違いは傷病手当金。会社員・公務員にはあり、国民健康保険・後期高齢者医療にはありません
✅ 付加給付は健康保険組合・共済組合にあることがあり、自己負担がさらに軽くなる場合がある
✅ 高額療養費制度はどの健康保険にもあります
✅ まずは資格確認書などの「保険者名称」で、自分の加入先を確かめる

わからないときは、加入先の窓口へ電話を。「今の保険で使える給付を知りたいのですが」と伝えるところからで大丈夫です。入院中の方は、病院の相談窓口・地域連携室でも相談できます(医療ソーシャルワーカー(MSW)が配置されている病院では、傷病手当金の申請についても相談できます)。
📎 参照・根拠
  • 国民健康保険法第58条第2項(傷病手当金・出産手当金は、条例または規約の定めるところにより行うことができる「任意給付」)
  • 全国健康保険協会「任意継続被保険者の保険給付」「埋葬料(費)」「出産育児一時金」
  • 厚生労働省「出産育児一時金等について」

※本記事は2026年9月時点の一般的な情報です。付加給付の内容、葬祭費の金額、傷病手当金の有無(国民健康保険組合の場合)などは、加入先によって異なります。実際のご利用にあたっては、必ず加入先にご確認ください。