65歳の誕生月が近づくと、市区町村から「介護保険被保険者証」が届きます。「まだ介護なんて必要ないのに?」「年金から保険料が引かれてるけど、これって何?」——そんな疑問に答える記事です。介護保険が誰のお金で動いているのか、そして申請はいつすべきなのか。仕組みを知っておくと、必要になったとき納得してサービスを使えます。
65歳になると変わる3つのこと
40〜64歳は「第2号被保険者」、65歳からは「第1号被保険者」です。大きな違いは、第1号は原因を問わず、要介護状態になれば認定を申請できること(第2号は、加齢に起因する16種類の特定疾病による場合に限られます)。
② 介護保険証が届く
市区町村から介護保険被保険者証が交付されます。届いた時点では、まだ何も手続きは必要ありません。大切に保管しておきましょう。
③ 保険料の納め方が変わる
64歳までは医療保険料と一緒に納めていましたが、65歳からは市区町村に直接納めます。年金が一定額以上の方は、年金からの天引き(特別徴収)が基本です。「年金から何か引かれている」の正体はこれです。
1割負担の「残り9割」は誰のお金?
介護サービスは原則1割負担(一定以上の所得がある方は2割・3割)で利用できます。では、残りは誰が払っているのでしょうか。
| 財源 | 割合 | 内訳 |
|---|---|---|
| 公費(税金) | 50% | 国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%(居宅給付費の場合) |
| 65歳以上の保険料 | 23% | 第1号被保険者(あなたの保険料もここに) |
| 40〜64歳の保険料 | 27% | 第2号被保険者(現役世代が支えている) |
※保険料の割合(23%・27%)は第9期(令和6〜8年度)のもの。全国の人口比率に基づき3年ごとに見直されます。
つまり、1割負担で使えるサービスの残り9割は、全世代の保険料と税金で支えられています。介護保険の費用は、制度が始まった2000年度の約3.6兆円から、令和6年度には11兆9,381億円(過去最高)と約3倍に拡大しました。高齢化でこの先も増える見込みで、制度をどう持続させるかが課題になっています(2割負担の対象範囲の見直しが、第10期の始まる2027年度の前までに結論を得るとされるなどの動きもあります)。
被保険者の区分や認定からサービス利用までの流れは、介護保険のしくみ〜だれが支えているの?どうやって使うの?で詳しく解説しています。
保険料はどう決まる?〜隣の市と額が違う理由
「隣の市に住む友人と保険料の額が違う」——実はこれ、正常なことです。
- 65歳以上の保険料は、市区町村が3年ごとに決めます(介護保険事業計画の期間ごと)。その地域でどれだけサービスが使われる見込みかによって決まるため、市区町村ごとに額が異なります
- 一人ひとりの額は所得に応じた段階制です。第9期(令和6〜8年度)からは標準13段階となり、負担する力に応じた設定が強化されました
- 40〜64歳の方の保険料は、加入している医療保険(健康保険組合・国保など)を通じて納めます
介護保険の目的は「お世話」ではなく「自立支援」
介護保険法の第1条(目的)には、こう書かれています。
ポイントは2つあります。
- 目的は「自立支援」:介護保険は「何でもやってあげる」ためではなく、できることを奪わず、その人の力に応じた生活を支えるための制度です。保険給付は、要介護状態の「軽減又は悪化の防止に資するよう」行うことも定められています(第2条)。使うサービスを自分で選べること(被保険者の選択)も法律に明記されています
- 「みんなで支え合う」と法律に書いてある:第4条には「国民は、共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担するものとする」とあります。40歳から保険料を納めるのも、この支え合いの一部です。あわせて、自ら要介護状態となることを予防するよう健康の保持増進に努めることも定められています(第4条第1項)
申請は権利。でも「とりあえず」は考えもの
まず、いちばん大事なことから。
そのうえで、知っておいてほしいことがあります。認定には、調査員の訪問調査・主治医の意見書・介護認定審査会という、多くの人手と行政コストがかかっています。
申請数の増加により認定結果の通知までの期間が長くなり、「当面サービス利用の予定がない場合は申請を見合わせてほしい」と公式に呼びかけた自治体もあります(奈良市・2026年)。
「使う予定はないけど、とりあえず」という申請が増えると、いま本当にサービスが必要な人の認定が遅れてしまうのです。認定は、必要になってからの申請で間に合います(申請日にさかのぼってサービスを使える仕組みがあります)。
よくある質問
保険料を払っていれば、自動的にサービスを使えますか?
使わなかった保険料は戻ってきますか?
40歳から保険料を払っているのはなぜですか?
元気なうちに認定だけ取っておくべきですか?
まとめ・根拠法令
✅ 65歳からは第1号被保険者。保険証が届き、保険料は年金天引きが基本に
✅ 1割負担の残り9割は税金50%+全世代の保険料50%で支えられている
✅ 保険料は市区町村が3年ごとに決めるため、地域によって額が違う(所得に応じた13段階)
✅ 介護保険の目的は「自立支援」。「みんなで支え合う」ことは法律に明記されている
✅ 申請は正当な権利。必要なら堂々と。迷ったら地域包括支援センターへ。「とりあえず」は考えもの
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html - 厚生労働省「令和6年度 介護給付費等実態統計の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/24/index.html
- 介護保険法第1条(目的)・第2条(介護保険)・第4条(国民の努力及び義務)
- 財源・負担割合:介護保険法第121条以下(国・都道府県・市町村の負担)、第129条(保険料)
- 第9期(令和6〜8年度)の保険料負担割合(第1号23%・第2号27%):厚生労働省資料による
※本記事は2026年7月時点の一般的な情報をまとめたものです。保険料の額・納め方・運用の詳細は市区町村によって異なります。お住まいの自治体の案内や地域包括支援センターでご確認ください。