「退院後の生活が落ち着くまでの、当面の生活費が足りない」「手すりをつけたいけれど、まとまったお金がすぐには用意できない」。退院を前にしたご相談の中で、こうしたお金の壁にぶつかることがあります。

そのようなときに使える制度の一つが「生活福祉資金貸付制度」です。社会福祉協議会が窓口となり、生活の立て直しに必要な資金を、無利子または低い利子で貸し付ける仕組みです。この記事では、対象となる方、資金の種類、利用の流れ、相談先についてわかりやすく紹介します。

生活福祉資金貸付制度とは

生活福祉資金貸付制度は、低所得の世帯・障害のある方がいる世帯・高齢者のいる世帯に対して、生活の立て直しに必要な資金を貸し付ける制度です。都道府県の社会福祉協議会が実施主体となり、お住まいの市区町村の社会福祉協議会が窓口になります。

💡 いちばん大きな特徴は「利子」です。連帯保証人を立てられる場合は無利子、立てられない場合でも年1.5%という低い利率です(緊急小口資金・教育支援資金は保証人なしでも無利子)。民間の借入とは性格がまったく異なり、生活を立て直すことを目的とした福祉の制度です。
⚠️ ただし「貸付」です。給付ではありません。借りたお金は、決められた期間のうちに返していく必要があります。返済の見通しが立つかどうかも含めて、社協の担当者と一緒に確認していきます。まず返さなくてよい制度(高額療養費・各種手当・生活保護など)が使えないかを先に検討するのが基本です。

対象となる世帯

次のいずれかにあてはまる世帯が対象です。

低所得者世帯:必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)
障害者世帯:身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた方などが属する世帯
高齢者世帯:65歳以上の高齢者が属する世帯

「自分の世帯が対象になるか分からない」という段階で相談して大丈夫です。収入や世帯の状況をもとに、社協の担当者が確認してくれます。

資金の種類

資金は大きく4つに分かれています。目的によって、借りられる額も返済の条件も変わります。

資金の種類 おもな用途 貸付限度額 利子
総合支援資金
(生活支援費)
生活再建までの間に必要な生活費 2人以上の世帯:月20万円以内
単身:月15万円以内
(貸付期間 原則12月以内)
保証人あり:無利子
保証人なし:年1.5%
総合支援資金
(住宅入居費)
敷金・礼金など、住宅の賃貸契約を結ぶための費用 40万円以内
総合支援資金
(一時生活再建費)
技能習得の経費、滞納している公共料金の立て替え、債務整理に必要な経費など 60万円以内
福祉資金
(福祉費)
療養に必要な経費と療養中の生計費介護サービス・障害福祉サービスを受けるための経費とその期間の生計費、住宅の増改築・補修、福祉用具等の購入、住居の移転費用、生業を営む経費、冠婚葬祭費など 580万円以内
(用途に応じて上限の目安あり)
福祉資金
(緊急小口資金)
緊急かつ一時的に生計の維持が困難になった場合の少額の費用 10万円以内 無利子
(保証人不要)
教育支援資金 高校・高専・短大・大学の修学に必要な経費(教育支援費)、入学に際し必要な経費(就学支度費 50万円以内) 高校:月3.5万円以内
高専・短大:月6万円以内
大学:月6.5万円以内
無利子
(世帯内で連帯借受人が必要)
不動産担保型
生活資金
低所得の高齢者世帯が、住んでいる家や土地を担保にして生活資金を借りる 土地の評価額の70%程度
月30万円以内
年3%、または長期プライムレートのいずれか低い利率

※厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧」より。据置期間・償還期限は資金の種類ごとに定められています。

💡
入退院にいちばん関係が深いのは「福祉費」です。用途の中に療養に必要な経費介護サービスを受けるための経費住宅の増改築・補修福祉用具の購入がはっきりと挙げられています。退院に向けて住まいを整える、退院後の療養中の生活費を確保するといった場面に、まさに対応した資金です。

利用までの流れ

1
市区町村の社会福祉協議会に相談
「退院後の生活費が心配」「手すりをつけたいがお金が用意できない」など、困っている内容をそのまま伝えます。入院中の方は、病院の相談窓口から社協につないでもらうこともできます。
2
どの資金があてはまるか確認
使いみち・世帯の状況・収入をもとに、どの資金が使えそうかを一緒に整理します。ほかに使える制度があれば、そちらも案内されます。
3
申請書類を準備して提出
借入申込書のほか、世帯の状況が分かる書類、収入の分かる書類、見積書(住宅改修や福祉用具の場合)などが必要になります。必要書類は資金の種類によって異なります。
4
審査
市区町村社協を経て、都道府県社会福祉協議会が審査します。ここに一定の日数がかかります。
5
決定・貸付
貸付が決定すると、資金が交付されます。返済は「据置期間」(返済を待ってもらえる期間)が終わってから始まります。

利用するときの注意点

⚠️ 知っておきたい5つのポイント

返済が必要です:貸付制度なので、据置期間のあとに返済が始まります。返済の見通しも含めて相談することが大切です

審査があり、時間がかかります:「明日までにお金が必要」という場面には間に合わないことがあります。見通しがついた早い段階で相談するのが、この制度をうまく使うコツです

総合支援資金・緊急小口資金は、原則として自立相談支援事業の利用が要件です生活相談支援センター(自立相談支援機関)での相談とセットで進むのが基本の形です

ほかの制度が先に使えないか確認しましょう高額療養費制度無料低額診療事業など、返さなくてよい制度が使えるならそちらが先です

実際の運用は都道府県によって差があります:必要書類や上限の目安額は、お住まいの社協で確認してください

入退院支援で活用する場面

病院の相談の中では、例えば次のような場面でこの制度が候補になります。

✅ 退院後、療養しながら生活を立て直すまでの生活費が足りない
✅ 手すりの設置・段差解消など、介護保険の住宅改修だけでは足りない部分の費用が用意できない
✅ 介護保険の対象外の福祉用具を購入したい
✅ 退院にあわせて住まいを移る必要があり、敷金・礼金や引っ越し費用が必要
✅ 入院で収入が途絶え、一時的に生計の維持が難しくなった
💬 現場から:退院支援でこの制度が力を発揮するのは、「あと少しの資金があれば自宅に帰れる」という場面です。住宅改修の自己負担分、当面の生活費、引っ越し費用。金額としては大きくなくても、それが用意できないために退院先の選択肢が狭まってしまうことがあります。

ただし審査に日数がかかるため、退院日が決まってから動くのでは間に合わないことも少なくありません。「お金の見通しが立たない」と分かった時点で、早めに社協や病院の相談窓口へつなぐことが大切です。

相談先

🤝 お住まいの市区町村の社会福祉協議会:この制度の窓口です。市区町村社協が分からない場合は、都道府県社会福祉協議会に問い合わせると案内してもらえます
🏢 生活相談支援センター(自立相談支援機関):総合支援資金・緊急小口資金は、こちらの相談とセットで進むのが基本です
🏥 病院の相談窓口・地域連携室:入院中の方はこちらへ。医療ソーシャルワーカー(MSW)が配置されている病院では、制度の利用や関係機関との調整について相談できます

まとめ

この記事のまとめ:

✅ 生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯・障害者世帯・高齢者世帯に、生活の立て直しに必要な資金を無利子または年1.5%で貸し付ける制度
✅ 窓口はお住まいの市区町村の社会福祉協議会(実施主体は都道府県社協)
✅ 資金は総合支援資金・福祉資金・教育支援資金・不動産担保型生活資金の4種類。入退院では福祉費(療養費・介護サービスの費用・住宅改修・福祉用具)がとくに関係が深い
給付ではなく貸付なので返済が必要。まず返さなくてよい制度が使えないかを先に検討する
審査に日数がかかるため、お金の見通しが立たないと分かった時点で早めに相談を
📎 参考・根拠法令

根拠法令:社会福祉法第2条第2項第7号(生計困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業/第一種社会福祉事業)。運用は厚生労働省の生活福祉資金貸付制度要綱等の通知に基づき、都道府県社会福祉協議会が実施しています。

※本記事は2026年7月時点の情報です。貸付限度額・利率・必要書類・運用の詳細は変更されることがあり、都道府県によっても異なります。実際の利用にあたっては、お住まいの市区町村の社会福祉協議会に必ずご確認ください。